その男、凶暴につき
淀川長治に「これが映画だ」と言わしめました。邦画界を代表する映画だと思います。
今回は「その男、凶暴につき」の魅力を語りたいと思います。
また、平泉成演じる岩城刑事が汚職に手を染めた理由について考察してみます。
こんな方にオススメ
・邦画でバイオレンスモノが観たい方
・アウトレイジが好きな方
・邦画の名作が観たい方
その男、凶暴につきのあらすじ
一匹狼の刑事・我妻諒介は凶暴なるがゆえに署内から異端視されていた。ある晩、浮浪者を襲った少年の自宅へ押し入り、殴る蹴るの暴行を加えて無理矢理自白させた。暴力には暴力で対抗するのが彼のやり方だった。麻薬売人の柄本が惨殺された事件を追ううち、青年実業家・仁藤と殺し屋・清弘の存在にたどり着いたが、麻薬を横流ししていたのは、諒介の親友で防犯課係長の岩城だった。
その男、凶暴につきのスタッフ・キャスト
監督:北野武
製作:奥山和由
出演:ビートたけし
白竜
その男、凶暴につき 解説 これぞ映画!
・多くを語らないストーリー
この映画、ストーリの説明が一切ありません。
会話や舞台背景で想像するしかありません。
例えば、汚職警官の岩城はなぜ汚職に手を染めていたのかの説明が一切ありません。
ですが、映画をよく見ればその理由が見えてきます。
岩城が汚職に手を染めた理由
岩城が駐車場を歩くシーンで下腹部を手でかばうように抑えています。
これは、岩城が胃がんであるということを暗示しています。
奥さんと二人暮らしの岩城は、自分が死んでしまった後奥さんの為にお金を残せるように汚職をしていたのです。
こんな説明は映画内で登場人物から語られることはないのですが、よく観ていくと一つ一つの動作や背景に意味が込められているのです。
説明はセリフではなく情景でするところがとてもいいですよね。
僕にとって映画の見方を教えてくれた作品でもあります。
岩城の胃がん説ですが、これは以前テレビか何かのインタビューで武さん自信がそうおっしゃられていたので間違いないです。
・唐突にくる暴力シーン
この映画かなりのバイオレンス作品で様々な形で暴力が振るわれるのですが、その暴力はどのシーンも勿体ぶることなく淡々と描かれます。
殺し屋の清弘(白竜)に我妻(ビートたけし)が街中でナイフで刺されるシーンがあります。
普通なら敵と対峙した時になにかセリフがありますが、一切セリフがなくロングショットで「サクッ」と刺されます。
そしてカメラが二人に寄ると、我妻は間一髪ナイフの刃の部分を握り致命傷を回避していた。我妻の手からは血が滴り落ちている。
息も詰まるものすごい緊張感です。
そしてこの後のシーンがさらに残酷で
清弘がナイフの次は拳銃を取り出しためらいもなく我妻に向け引き金を引くのですが、向けた瞬間我妻のキックで銃口をそらし鉛玉を避けるのですが脇にいた一般人に被弾してしまいます。
この一連のシーンすごく短いのですが、一連の動作に無駄がなく臭いセリフもなくただ残酷な暴力がむき出しになったシーンです。
ドラマの2時間スペシャル版みたいな邦画には絶対に描けないシーンじゃないでしょうか?
・演技させない
北野武監督は演技させない監督として有名です。たけし軍団の芸人を起用したり新人俳優を主演に起用したりと演者に意識的に演技させないようにしています。
これにより、演者の素な表情や話し方がとてもリアルでいいんです。
これは、普段カメラにとられる側の芸人ビートたけしだからできる演出だと思います。こう撮られると、どう見えるかということ良く知っているからこそじゃないでしょか?
これは以前記事で取り上げた映画「実りゆく」にも通じますね。
マネージャーとして人を見る目があるからキャスティングでとても成功している映画です。
will-oishiiseikatsu.hatenablog.com
最後に
最後までお読みいただきありがとうございます。
「その男、凶暴につき」観たくなったでしょうか?
初めての長編映画作品でこれだけの作品を撮るのはさすが世界のキタノです。
北野武作品はサブスク解禁していないのが残念ですが、パッケージでコレクションしておいて損はない一作ですよ。
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