はじめに
イギリスのBBCによる「21世紀に残したい映画100本」をご存じでしょうか?
邦画では黒澤明監督の「乱」や小津安二郎監督の「東京物語」などと巨匠の作品と肩を並べて北野武監督の「ソナチネ」が選出されています。
ただのヤクザ映画だと思って観ていない方は必ず観てほしい作品です。
ソナチネ
1993年製作/94分/日本
配給:松竹
あらすじ
広域暴力団・北嶋組の友好団体である中松組が、沖縄の阿南組と抗争になった。北嶋組傘下の村川組組長・村川は助っ人を命じられ、手下たちを連れて沖縄へ向かう。しかし彼らの加勢をきっかけに抗争はますます激化し、手下たちが次々と命を落としていく。海辺の廃屋に身を隠した村川たちは、少年時代に戻ったかのように無邪気に遊んで過ごすが……。
スタッフ・キャスト
監督:北野武
脚本:北野武
撮影:柳島克己
編集:北野武
音楽監督:久石譲
出演: ビートたけし
渡辺哲
ソナチネ 解説・考察
北野武作品の中でも1番評価されているのはソナチネではないでしょうか?
「パルプフィクション」のクエンティン・タランティーノ監督やノーベル文学賞受賞者の大江健三郎さんも絶賛していました。
当時、興行的にはあまり振るわなかったそうですが、1994年ロンドン映画祭やカンヌ国際映画祭で上映され、欧州を中心に高く評価され、「キタニスト」と呼ばれるファンを生み出していきました。
日本では芸人のイメージが強すぎるため当時作家性の強すぎる本作はあまり受け入れられなかったのかもしれませんね。
ソナチネの凄味
ソナチネのストーリはとても単純です。
親分の罠で沖縄に飛ばされ抗争に巻き込まれてしまう。
最後復讐を絶たし自らも命を絶つ。
ものすごく明快なストーリーですし、よくあるヤクザ映画のストーリーです。
ですが、ソナチネは一味違います。
暴力と平穏のコントラストが美しいのです。
抗争に巻き込まれ組事務所にもいれなくなった村川組は海辺にある中松組の隠れ家ヘ避難します。
ですが、何もすることがない日々の中でフリスビーや紙相撲ごっこ、ロケット花火の打ち合いなど子供の遊びで時間を潰していき夜は酒を呑んで寝るといった日々を過ごします。
青い空に白い砂浜どこまでも続く海という美しい景色の中で”死”という圧倒的な暴力が忍び寄ります。
というよりも、死に惹かれていくといった方がいいのでしょうか
悪い方に悪い方にと導かれるように進んでいきます。
無邪気な子供がいたずらや悪さに惹かれるように
戦争ごっこや落とし穴だったり危なかったりいけない事だと分かっていても楽しい遊びがあったかと思います。なぜ楽しかったのでしょうか?
ソナチネは人間の根本にあるものを映そうとしているよに思うのです。
だから鑑賞後他のヤクザ映画を観た後とにはない余韻が続くのです。
ポスターのナポレオンフィッシュが意味すものとは
ソナチネのポスターはとても不穏な雰囲気を醸し出していますよね。
赤い空をバックにナポレオンフィッシュが銛で串刺しにされています。
ナポレオンフィッシュとは沖縄などの南西諸島などの亜熱帯地域に生息する大型の海水魚です。
今までこのポスターのこと深く考えたことは無かったのですが、これはたけし演じる村川自信を現しているのではないでしょうか?
ナポレオンフィッシュの青い体は、映画途中から登場する青い車(カリーナED)の青なのではないでしょうか?
映画ラスト川村は青い車の中でこめかみを銃で撃ち自決するのですが、ポスターをよく見てみると銛はこめかみを貫通しているのが分かります。
銛で撃たれるのか自ら引き金を引くのかで違いがありますが死という運命には逃れられないのであればどちらも同じことなのではないのでしょうか?
ちなみにナポレオンフィッシュは絶滅危惧種に指定されています。
最後に~祝ファーイースト映画祭生涯功労賞受賞~
北野武監督が2022年4月29日にイタリアで開催されるウディネ・ファーイースト映画祭にて生涯功労賞を受賞しました。
ウディネ・ファーイースト映画祭とは東アジアおよび東南アジアの最新の映画作品を扱った映画祭で、今回体調を理由にオンラインで登壇となりました。
この時ソナチネも公式上映されたそうです。
体調のことは心配ですが、現在新作映画は編集中とのことで来年には公開されるかもしれないですね。楽しみがまた一つ増えました。
下の動画は授賞式の様子なのですがオープニングが胸アツなのでぜひご覧ください
サブスク配信はありませんのでブルーレイをご自宅に1本ぜひ
武映画ファン必読の一冊
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