映画「ディア・ドクター」レビュー解説考察 伊野の失踪の理由は?正体は?

今回の映画は「ゆれる」や「すばらしき世界」の西川美和監督の「ディア・ドクター」です。

鶴瓶演じる主人公伊野は人口1500人ほどの小さな村の診療所の医者で、村人からの人望も厚く、村になくてはならない存在であったが、伊野には隠し事があった・・・。

 

今回の記事ではレビューをはじめ見どころから、なぜ伊野が失踪したのか?伊野の正体など作品を考察していきたいと思います。

 

 

 

 

ディア・ドクター

ディアドクター

2009年製作/127分/日本
配給:エンジンフイルム、アスミック・エース

 

 

あらすじ

都会の医大を出た若い研修医・相馬が赴任してきた山間の僻村には、中年医師の伊野がいるのみ。高血圧、心臓蘇生、痴呆老人の話し相手まで一手に引きうける伊野は村人から大きな信頼を寄せられていたが、ある日、かづ子という独り暮らしの未亡人から頼まれた嘘を突き通すことにしたことから、伊野自身が抱えいたある秘密が明らかになっていく……。

ディア・ドクター : 作品情報 - 映画.com

 

スタッフ・キャスト

監督・原作・脚本:西川美和

 

出演:笑福亭鶴瓶

   瑛太

   余貴美子

   井川遥

   香川照之

   八千草薫

 

ディア・ドクター レビュー解説考察

落語家である笑福亭鶴瓶が主演を演じるということで公開当時も話題になり、バラエティー番組では芸人に結構イジられていたと思います。(いい意味で)

 

映画は村人から慕われていた医者、伊野(鶴瓶)が失踪したところから始まります。

何か事件に巻き込まれてしまったのか?

失踪の理由をたどるため映画は研修医である相馬(瑛太)が神和田村にやってきたところまで遡ります。

 

瑛太が運転する真っ赤なBMW3シリーズ(E36)カブリオレが都会の若者感を醸し出していて、緑色の田畑の中を赤いオープンカーが失踪する画は場違い感があり、村にやってきた相馬の気持ちをよく表せていたと思います。

車はわき見運転ですぐに事故してしまうのですが、救急訪問の後フロントバンパーがなくナンバーをテープでつけただけの状態で走るBMWは相馬の心が打ち砕かれたようで、すぐに村に打ち解けていく様子をさりげなく演出したいいギミックでしたね。

 

家族の写真を少しだけ写したり、机の上の様子などで画だけで説明するカットが多く西川美和監督の演出の巧妙さがとても素晴らしいと思いました。

セリフでは説明されないキャラクターの背景を想像することができるのがいいんですよね。

 

 鶴瓶の演技がいい

 

この映画役者の配役や演技はとてもよかったですね。

医者役の伊野演じる鶴瓶はニセ医者なのですが、ニセ医者が本物を装っています感がすごい出ていてこの辺のリアリティが素晴らしのです。

物語のキーである鳥飼かづ子役を演じた八千草薫も言わずもがなよかったですね。

自分の意見はあまり言わない奥ゆかしい感じがとてもよく、未亡人のため映画には夫の姿は登場しないのですが、夫がいた時のことを想像できる演技は流石だなと思いました。

二人が夕飯を食べるシーンで鳥飼に伊野が野球のルールを教えるシーンがあるのですが、あの二人の何とも言えない距離感が最高でしたね。

香川照之の演技もすばらしく、オーバーな顔芸もいいですが、さりげない表情のつくりかたは「ゆれる」でもそうでしたが一級品ですね。

 

 「その嘘は、罪ですか?」

 

ポスターのキャッチコピーにもある通り、

その嘘は、罪ですか?」という問い。

自分は嘘には二つあると思います。

人を不幸にする嘘

そして

人を幸せにする嘘

伊野が付いた嘘は果たしてどっちだったのでしょうか?

とても考えさせられるテーマでした。

 

相馬が自分の父親を語るシーンで、

「親父は経営のことばかり考えている」と言っていました。

治療はできないけど患者のことを第一に考えている伊野とどちらが本当の医者なのでしょうか?

そして、

心配する村人はたちは伊野の安否を心配していたのでしょうか?それとも村に医者がいなくなった事態を心配していたのでしょうか?

 

人が持つ「嘘と本当」「本音と建て前」善とは正しさとは何かを考えさせられる映画でした。

 

 

伊野の失踪の理由は?

ここで伊野が失踪した理由を考察していきたいと思います。

それは自分の嘘で人を死なせてしまうことに耐えられなかったからではないでしょうか?

それは人を騙すためではなく本心で村人のためにニセ医者を演じていた伊野だからこその選択だったのではないでしょうか?

自分がニセ医者だと白状しては村人たちを不安にさせてしまうから失踪して本物の医者である鳥飼の娘に託すことしかできなかったのだと思います。

また、そこには罪の意識もやはりあったのでしょう。

伊野は作業員の坂本君の手術中逃げだそうとしていました。

患者にもし万が一のことがあったら逃げ出そうといつも考えていたのかもしれません。

 

伊野の正体 なぜニセ医者になったのか?

伊野の正体はピースメーカーを販売するトーソーメディカの営業マンでした。

セリフなどから考察するに、

医者不在で悩んでいた村長(笹野高史)に医者と偽り診療所にもぐりこんだのだと思います。村であれば人も少なく楽だろうという考えがあったのです。

 

そんな甘い考えで医者を演じることができるでしょうか?

 

おそらく伊野自身も昔医者を目指していたのではないでしょうか?

只の医療機器メーカーの営業マンが3年も医者を偽るのは不可能だと思うからです。

胃カメラの扱いや注射、診察などはある程度医者の勉強をしていた伊野だからできたのだと思います。

実際父親は医者でした。医者を目指いしていたけど挫折し医療機器メーカーに就職したと思われます。

警察が伊野の両親の自宅に電話した時、伊野が診療所で医者をしていることを告げると母親が受話器を静かに下すしぐさをすることからも想像できます。

 

人を救うために医者の道を志していた伊野は、自分も誰かの為に、誰かを救いたいという思うようになりニセ医者を演じ続けたのです。

 

斉門(香川照之)との会話や事情聴取シーンから察するに、

斉門の成績アップのために結託していた様子が描かれています。

はじめは金儲けやのためだったかもしれませんが村人たちの喜ぶ姿を観て斉門自身も伊野を助ける共犯関係になっていきました。

 

警察の事情聴取のシーンで斉門が椅子からわざと倒れるシーン。咄嗟に支える刑事に「これは愛ですか?」と問う。

困っている人がいたから助けたただそれだけの理由だったのかもしれません。

 

伊野の正体に気づいていた人物

斉門はもちろん、相馬や看護婦の大竹も伊野の正体に気づいていました。

実際に過疎地域の医者不足は深刻な社会問題となっています。村人たちのために嘘をつき続けたのでしょう。

伊野が去った村に本物の医師が派遣されることを願うばかりです。

 

 

 

皆さんいかがだったでしょうか?

「ディア・ドクター」緊急処置など緊迫するシーンなど医療映画的な楽しみもあり、傑作と言っていい映画でしたね。

また、香川照之の演技もよく、西川美和監督作品にも早く戻ってきてほしいと願うばかりです。

また映画ラストの二人の笑顔は偽りの笑顔でしょうか?

正しさとは何か?「すばらしき世界」につながる話だとも感じました。

皆さんはどう感じましたか?

 

 

 

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